経理で分ける電子帳簿保存法の3区分|電子取引・スキャナ保存・電子帳簿等
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
経理の電子保存は、書類をデジタルで保管するという結果よりも、どこで電子データになったかで3区分に分けます。取引先から電子で届いた請求書、紙から撮影した領収書、自社の会計ソフトで作成した帳簿は、見た目が同じファイルでも保存の根拠が異なります。
「紙の領収書を撮った画像と、メール添付のPDFを同じ電子フォルダに入れればよいのか」と迷う場面があります。保存先の場所だけで区分を決めると、後から原資料の形態や受領経路を説明しにくくなります。
本記事では、電子取引データ、スキャナ保存、電子帳簿等保存の対象を、経理が受け取る資料の動きに沿って確認します。区分ごとの義務と任意の違いも、実際の請求書・領収書・総勘定元帳で見分けます。
本記事で分かること
- メール添付PDFやダウンロードした請求書の区分
- 紙の領収書を撮影した画像の位置づけ
- 総勘定元帳など自社で作る記録の扱い
結論:経理で分ける電子帳簿保存法の3区分(早見表)
電子帳簿保存法の3区分とは、電子取引の受領データ、紙を読み取った書類、自社で電子作成した帳簿・書類を発生経路で分ける分類です。電子取引の取引情報は電磁的記録の保存が義務ですが、スキャナ保存と電子帳簿等保存は、要件に従って電子保存へ切り替えることができる制度です。根拠は電子帳簿保存法第4条第1〜3項・第7条です(現行版施行日2025-04-01、令和7年法律第13号による改正、2026-10-21確認)。
| 発生経路 | 元の記録 | 区分と扱い | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 取引先から電子で受領 | メール添付PDF、取引先画面から取得した請求書 | 電子取引データ保存。受けた電磁的記録を保存 | 電子帳簿保存法第7条 |
| 取引先から紙で受領 | 紙の領収書を撮影した画像 | スキャナ保存。要件に従い紙に代えて電子保存できる | 同法第4条第3項 |
| 自社で電子作成 | 会計ソフトの総勘定元帳、自社作成書類 | 電子帳簿等保存。要件に従い電子保存できる | 同法第4条第1・2項 |
最初に「相手から届いた形式」と「自社で最初に記録した形式」を受付台帳へ残すと、画像やPDFを後で開かなくても区分をたどれます。同じ請求書でも、先方から届いたPDFを印刷して再スキャンしたなら、元の電子取引データを見失わないことが重要です。
電子取引で受けたデータ
取引先から電子で受けた取引情報は、その電磁的記録が保存対象です。電子帳簿保存法第7条の対象かどうかは、請求書の表紙や拡張子より、相手との授受が電子取引であったかで見ます。受領の場所がメールか画面かによって、取り出す作業と証跡の残し方が変わります。
| 受領経路 | 経理が確保する記録 | 混同しやすい点 |
|---|---|---|
| メール添付 | 届いた請求書PDFと受領元を追える情報 | 印刷物だけを原本扱いしない |
| 取引先画面 | 取得した請求書データと取得先の記録 | 画面閲覧と保存完了を分ける |
受付票には取引先と日付に加え、最初に届いた形式を残します。メールのPDFを印刷した後に紙のファイルへ綴じても、電子で受けた事実は変わりません。逆に、紙を撮影して共有した場合は紙の受領経路が出発点です。担当者が交代してもこの区別を再現できるよう、受信先や紙の保管場所を同じ案件番号からたどれる形にします。
メール添付PDFの受領経路
メールに添付された請求書PDFは、送信者の環境で作られたデータが経理へ電子的に届いたものです。社内でそのPDFを印刷して押印欄を回覧しても、受領の起点は電子のままです。したがって、紙を取り込むスキャナ保存へ付け替える理由にはなりません。ファイルの保存後は、差出人、受信先、取引先、対象となる請求を結び付けておくと、同じ名前のファイルが重なった場合にも追跡しやすくなります。
請求書を共有メールボックスで受ける運用では、受信した担当者と承認に回した担当者が違うことがあります。添付ファイルを単に転送するだけでは、どの版が正式に届いたものか分かりにくくなります。受付時にファイルを保存し、取引先名と取引日を原本の記載から確認して管理台帳へ登録します。金額の訂正があった場合は、先の版を無言で上書きせず、取引先から届いた訂正の経緯までたどれる状態にします。

電子取引の保存では、見読可能性や検索の条件も別途確認します。電子帳簿保存法施行規則第4条第1項は、同規則第2条の関連要件を準用しています(現行版施行日2025-04-01、2026-10-21確認)。メールの受信日時だけを検索キーにするのではなく、取引に記載された日付・金額・取引先へ戻れる設計が必要です。
ダウンロードした請求書の受領記録
取引先の画面で請求書を閲覧する方式でも、経理が電磁的記録の提供を受ける点は変わりません。画面に表示された金額を社内メモへ書き写すだけでは、提供された請求書データそのものの保存とは区別がつきません。ダウンロード可能なファイルを取得し、どの取引先の画面から、どの請求期間の資料を受け取ったか分かるようにします。
画面上の請求書が後で更新される運用なら、受領した版の識別が特に大切です。請求年月や取引先名だけが同じでも、税額や振込先が変更された可能性があります。経理では画面通知、取得ファイル、承認に使った版の対応を残し、訂正版を受けたら担当者が差分を確認します。電子保存の対象を決める入口は受領経路であり、承認や支払の結果は別の記録として対応づけます。

紙から作るスキャン画像
スキャナ保存は、紙で受けた国税関係書類の記載事項を電子記録にする経路です。電子帳簿保存法第4条第3項は書類に記載された事項を財務省令で定める装置で記録した場合の取扱いを定め、施行規則第2条第5項はその装置をスキャナとしています(2026-10-21確認)。紙が先、画像が後という順序を失わないことが区分の鍵です。
| 元の形式 | 社内で作る記録 | 受付で残す対応 |
|---|---|---|
| 紙の領収書 | 撮影画像・スキャン画像 | 紙の受領先と画像の登録者 |
| 紙の請求書 | スキャンした請求情報 | 紙の版と画像の版の対応 |
紙の領収書を撮る場合
出張精算で従業員から紙の領収書が提出され、その場でスマートフォン撮影した画像は、取引先から電子で届いた領収書とは成立経路が異なります。撮影した瞬間に原資料の紙がなくなるわけではありません。スキャナ保存へ移るなら、画像の保存条件だけでなく、社内で紙を受け付けた日、撮影者、撮影後の紙の取扱いを一続きの手順として定めます。
画像は金額部分だけを切り抜くと、宛名、日付、発行元や但し書きとの対応が見えにくくなります。承認者が何を確認したか分かるよう、領収書全体の読める状態と経費精算書への対応を保ちます。申請が差し戻されて撮り直した場合も、どちらの画像が承認に使われたかが分かる記録が必要です。紙の受付から画像化までの経路を決めることが、電子化後の検索や照合を支えます。

画像と紙の照合を残す場合
スキャン画像を保存した後に、紙の領収書と画像が対応するか確認する場面を決めます。紙が複数枚ある取引では、表裏、添付された納品書、経費精算書の明細が別々に動くことがあります。画像の名称だけを頼りにせず、受付番号や取引の識別に用いる情報で資料同士を結び付けます。ここで重要なのは、スキャンした画像の内容と、経理が受け付けた紙の内容が一致していると説明できることです。
紙の廃棄可否を画像の存在だけで決めないようにします。電子帳簿保存法第4条第3項が認めるのは、要件に従った保存方法への切替えであり、撮影しただけで全ての要件を満たしたと判断できるわけではありません。保存方法の確認が済むまでは、社内の原本管理ルールも並行して確認します。紙を受け取った人と保存を確定する人が異なる職場ほど、この引渡しの記録が役立ちます。

自社で作る帳簿・書類
電子帳簿等保存は、自社が初めから電子的に作成した帳簿・書類の区分です。電子帳簿保存法第4条第1項は帳簿、第2項は書類について、一定の要件に従えば電磁的記録を保存に用いることができると定めています(2026-10-21確認)。同じ会計ソフト内に取引先から受けたPDFが置かれていても、そのPDFまで自社作成の帳簿にはなりません。
| 記録の例 | 作成者・元の形式 | 確認する区分 |
|---|---|---|
| 総勘定元帳 | 自社が会計ソフトで作成 | 電子帳簿等保存 |
| 受領した請求書PDF | 取引先から電子で受領 | 電子取引データ保存 |
総勘定元帳の作成経路
総勘定元帳を会計ソフトで作り、記帳の最初から電子記録で管理する場合は、自社作成の帳簿として見ます。紙で作成した帳簿を後から撮影する経路や、外部から送られた請求書を取り込む経路とは異なります。仕訳伝票の入力者や確定者、元の証憑への参照方法を決めておくと、帳簿を後から見た人が数字の出どころを追えます。
電子で作った帳簿を紙で出力しても、帳簿作成の起点は変わりません。ただし、法令上の電子保存へ切り替えるかどうかは、帳簿の作成方法だけで自動的に決まるものではありません。自社が採る保存方法について、作成過程と保存要件をそれぞれ確認します。月末の締めで帳簿が確定するなら、修正後の版と締め時点の版を混同しない管理も必要です。

自社作成書類と受領書類の境界
経理が作った支払通知書と、取引先から受け取った請求書は、どちらも社内に電子ファイルとして残る可能性があります。しかし区分を分ける基準は保存先のフォルダ名ではなく、その書類を最初に誰がどの形式で作り、どの経路でやり取りしたかです。自社作成書類として保存するもの、電子で授受した取引情報として保存するものを、受付票で別の欄にします。
電子帳簿保存法の3区分は、経理が同じ処理画面で扱う資料にも同時に現れます。受領請求書を承認し、その数字から仕訳を起こし、自社の帳簿へ反映する一連の流れでは、請求書と帳簿を同一の法的区分へまとめません。原資料を確認できる状態と、帳簿側の処理を説明できる状態をそれぞれ残すと、問い合わせ時にも資料を逆引きできます。
まとめ
経理の電子保存を確認するときは、請求書が電子で届いたか、紙から画像を作ったか、自社で最初から帳簿を電子作成したかを先に記録します。電子取引データには保存義務があり、スキャナ保存と電子帳簿等保存は要件に従った保存方法の選択です。保存先を一つにまとめる運用でも、資料ごとの発生経路は区別しておきます。
制度の対象を確認したら、電子帳簿保存法のカテゴリで関連する保存条件も確認できます。
よくある質問
- Q. メールで届いた請求書はどの区分ですか
- メールで受けた請求書データは、電子取引データ保存の対象として確認します。届いたPDFを社内で印刷したとしても、取引先との授受が電子で行われた事実は変わりません。電子帳簿保存法第7条は、電子取引を行った場合の取引情報に係る電磁的記録の保存を定めています。経理では届いたデータの保存先と受領元を対応づけておきます(現行版施行日2025-04-01、2026-10-21確認)。
- Q. 紙の領収書を撮影した画像も電子取引ですか
- 紙の領収書を撮影した画像は、電子取引で受けたデータとは作成経路が異なります。元の領収書が紙で、それを社内で画像にした場合は、電子帳簿保存法第4条第3項のスキャナ保存を検討する資料です。取引先から直接届いた電子データと同じフォルダに置く場合でも、紙の受付と撮影の記録を残すと、後で区分を説明できます(2026-10-21確認)。
- Q. 電子帳簿等保存もすべて義務ですか
- 電子帳簿等保存への切替えは、すべて義務というわけではありません。電子帳簿保存法第4条第1・2項は、自社で電子作成した帳簿・書類について、要件に従って電磁的記録による保存に代えることができると定めています。一方、第7条の電子取引データは保存しなければならないとしています。総勘定元帳と受領請求書で、根拠となる条文と保存の扱いを分けます(2026-10-21確認)。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(laws.e-gov.go.jp)
- 2.電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則(laws.e-gov.go.jp)